肝機能検査①「肝細胞の損傷の程度をみる検査」

今回は「肝機能検査」の「肝細胞の損傷の程度をみる検査」について知っていただきたいと思います。

「肝機能検査」はその名のとおり、肝臓の機能に異常がないかを調べる検査です。人間ドックで異常を指摘されることが多い検査ですが、γ-GTPが高いのはお酒を飲んでいるからだろう、いつも高いからよいだろう、そう思っている方も少なくないようです。

肝臓はお腹の右上に位置し、肋骨に守られています。重さは約1~1.5kgあり、内臓の中では大型の臓器に分類されます。アルコールを分解する働きのほかにも、糖・蛋白・脂質などの栄養素を利用しやすい形にして蓄え、必要なときに送り出す銀行のような働きをしています。アルコールだけでなく、いろいろな薬剤や有害な物質を分解し毒性の低い形にして排出してくれます。そのため肝臓の働きが悪くなると、体内に有害な物質がたまり脳症などを引き起こしてしまいます。


健康な肝臓は7分の1(約13%)が働いていれば生存は可能とされており、肝臓に異常が出現しても自覚症状として現れるまでには長い時間がかかることがあります。それゆえに肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、明らかな症状が出るころには既に病気が進行していることが多くあります。症状のみられないうちに肝機能障害を見つけ出し対応することが求められているのです。

AST(GOT)とALT(GPT)はアミノ酸を作るための酵素で、肝細胞に多く含まれます。肝細胞が破壊されるとASTとALTが血液中に放出されてしまいます。ASTは心筋や赤血球などにも含まれるので、ASTのみ高い場合は心筋梗塞や溶血性貧血など肝臓以外の病気が考えられる事もあります。肝細胞の傷み具合をみる検査ですが、肝硬変などあまりにも肝臓が傷んでしまった人の場合、壊れる細胞もなくなるため、高くならないことがあります。

肝細胞の障害でGOT、GPTが増加

γ-GTPもアミノ酸を作るために必要な酵素で、胆道から分泌されます。γ-GTPだけが高いときは、アルコールが原因の肝障害や膵臓の病気などが疑われることがあります。

胆道の障害、お酒や薬でγ-GTPが増加

最近、アルコールとは無関係に、栄養過多や肥満がもとで、γ-GTPやAST、ALTが上昇する非アルコール性脂肪肝(NAFLD:Non-AlchoholicFattyLiverDisease)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alchoholic steatohepatitis)といわれる病態に注目が集まっています。
肝臓が傷み、細胞が繊維に置き換わっていく肝線維化こそが、脂肪肝の予後と関連するとされており、その早期発見と経過観察にFIB4-index(※1)という数値を使います。

FIB4-indexはAST・ALT・血小板・年齢の4項目を組み合わせて計算し、大きくなるほど線維化が疑われます。高値の方は、肝臓の線維化の程度を超音波で測定できるフィブロスキャンや、MRIで肝臓の硬さを測定するMRエラストグラフィなどでくわしく調べていきます。

ここまでは肝細胞の損傷の程度をみる検査について解説しました。
次回は、「肝細胞のはたらきをみる検査」、「肝細胞や胆汁の流れに障害がないかをみる検査」について解説したいと思います。

※1 FIB4-indexは土浦協同病院の人間ドックに、通常検査項目として含まれています。