今回は「肝機能検査」の「肝細胞のはたらきをみる検査」、「肝細胞や胆汁(脂肪の消化を助ける液体)の流れに障害がないかをみる検査」について知っていただきたいと思います。
「肝細胞のはたらきをみる検査」は、総たんぱく(TP)・アルブミン(ALB)・コリンエステラーゼ(ChE)・乳酸脱水素酵素(LD)などが挙げられます。
総たんぱく(TP)とは、血液中のすべてのたんぱく質の総和で、主成分はアルブミン(70%)とγ-グロブリン(20%)です。そのほとんどが肝臓で産生されるため、肝臓に問題が起こるとこれらの合成能が低下しTPは減少します。
アルブミン(ALB)とは、総たんぱくのうち最も多い成分で、血液中の水分を一定に保つ働きをもち、そのほとんどが肝臓で産生されます。アルブミンの異常は肝障害の指標となります。
コリンエステラーゼ(ChE)は肝臓や血液中に存在し、アセチルコリンなどのコリンエステルと呼ばれる物質を分解する働きをしている酵素です。肝臓で合成されて血液中に流れていくため、血清中の値により、肝実質細胞の機能がわかります。ChEが低いときは、血清アルブミンも低い値を示すことが知られており、肝臓でのたんぱく合成能の指標として用いられます。
乳酸脱水素酵素(LDもしくはLDH)とは、糖分を分解してエネルギーを作る酵素で、血液中にはごく微量しか含まれません。
急性肝炎などにより肝細胞が壊れると、細胞内から血液中に多量のLDが流れ出るため、血液中のLD値が上昇します。ただし、LDは体内に広く分布し、肝臓以外にも腎臓・心筋・骨格筋・赤血球・がん細胞に多く含まれるため、異常が起こっている場所については他の検査と組み合わせて総合的に判断する必要があります。
「肝細胞や胆汁の流れに障害がないかをみる検査」は、総ビリルビン(T-Bill)・アルカリフォスファターゼ(ALP)が挙げられます。
ビリルビンは赤血球に含まれるヘモグロビンの分解産物で、肝臓で処理され胆汁に排出される黄色い色素です。間接ビリルビンと直接ビリルビンがあり、合わせて総ビリルビン(T-Bill)と呼びます。赤血球が古くなって壊れるときに出てくるビリルビンを間接ビリルビンといいます。間接ビリルビンが肝臓で処理され、胆汁中に入ると直接ビリルビンとなり、胆道から排泄されます。
肝臓の機能がおちると、間接ビリルビンを処理できなくなるため血液中に間接ビリルビンが大量にのこります。また胆道系の障害で胆汁の排泄が上手くいかないと血液中に直接ビリルビンが増えていきます。血液中のビリルビンが増えると、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が現れますが、直接ビリルビンと間接ビリルビンの数値をみながら、黄疸の原因を考えていきます。
アルカリフォスファターゼ(ALP)はリン酸化合物という栄養素を分解する働きがあり、肝臓や腎臓・骨・小腸などにある細胞でつくられます。通常は肝臓で処理された後に胆汁とともに排泄されますが、肝臓や胆道に異常が生じて胆汁がうまく流れなくなってしまうと、血液中にALPが漏れ出てきて数値が上昇します。
ですから、食事やサプリメント、薬から摂取することで補ってあげる必要があります。鉄分を多く含む食材として、ホウレンソウやレバー、ひじきの名前をよく聞くかと思います。
ここがポイント!
ALPとLDの検査方法が2020年から変わりました。
ALPとLDの検査には従来JSCC法(JSCC:日本臨床化学会)が用いられていましたが、2020年に日本臨床化学会からIFCC法(IFCC:国際臨床化学連合)に変更する指示が出されました。
LDの基準値は概ね変わりありませんでしたが、ALPの基準値はJSCC法の基準値の約3分の1となります。過去の数値と比較する際はご注意ください。