今回は「免疫血清検査」について知っていただきたいと思います。
人間はウイルスや細菌など外部から入ってきた病原体(抗原)に対し、ぴったりあう抗体というタンパク質を作ることができます。このシステムが『免疫』で、体内に侵入したウイルスや細菌を異物として攻撃することで、自分の身体を守ります。この抗原抗体反応を検査に利用したのが免疫血清検査です。人間ドックでは肝炎ウイルスや梅毒、リウマチ、その他感染症による炎症反応をみる検査などをおこないます。
●肝炎ウイルス検査
HBs抗原はB型肝炎ウイルスの表面に存在するものなので、この検査が高値(陽性)の場合、B型肝炎ウイルスが身体の中に存在していることを意味します。B型肝炎ウイルスが肝臓で炎症を起こすと肝臓が傷つき、時間をかけて慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がんへと進展していきます。そのため抗原検査が陽性だった場合、きちんと専門の診療科にかかって精密検査を行いましょう。B型肝炎ウイルス(HBV)は血液や体液に含まれるため、それらを通じて他の人にうつることがあります。かつては輸血によってうつることが有名でしたが、最近では輸血される血液はすべて検査されているため、輸血による感染は限りなくゼロに近づいています。その他では出産時の母子感染、性交渉、傷口などからの感染が知られています。年間約10,000人の新規感染者がいるとの話もあります。
一方、HBs抗体はHBs抗原に対する抗体です。この抗体を体内に持っている人は、過去にHBVに感染したけれども排除されている場合やワクチンを接種したことで免疫を取得した場合が考えられます。HBs抗体が陽性の場合、基本的にさらなる検査は不要です。
HCV抗体検査は、C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体を測定しています。HBs抗体と少し違ってHCV抗体が陽性の場合、さらなる検査が必要となります。HCV抗体が陽性でも身体の中にHCVウイルスが潜んでいる可能性があるからです。これらを詳しく調べるには、『HCV-RNA定量検査』が必要になります。HCVのRNA定量が体内に検出されなければよし、もし体内に潜んでいるようであれば他人にうつしたりしないよう、また肝炎とならないよう治療が必要です。HCV抗体検査が陽性の場合、専門の医療機関を受診してください。
●梅毒検査
梅毒病原体(梅毒トレポネーマ)の感染を調べます。
脂質抗原に対する抗体の有無を調べるRPR法は、梅毒感染の早期発見に有用な反面、梅毒に感染していなくても陽性と診断される可能性があります。
梅毒トレポネーマ抗原に対する抗体の有無を調べるTPHA(抗体)法は、梅毒の感染に対して特異性は高いのですが、治療した後も陰性化しにくいことがあります。二つの検査のよいところをあわせて診断していきます。梅毒も他人にうつす可能性がありますので、要精査と診断された場合はきちんと受診してください。
●リウマチ検査
RF(リウマトイド因子rheumatoid factor(※2))は、抗体の一種で、慢性関節リウマチ(RA)の疑いがあるかを調べることができます。というのもRFは健常人でも5~25%が陽性となるため、関節リウマチは関節炎や朝のこわばりなどの症状・血液検査・X線検査などをあわせて総合的に診断していきます。RFが陽性で症状や不安がある方は、専門科に相談することをお勧めします。
●その他感染症による炎症反応をみる検査
体内に炎症が起きたり、組織が壊れたりした場合、血液中に出てくるのがC反応性タンパク(CRP)です。
病原体の侵入で活性化されたマクロファージ(白血球の一種)は、炎症性サイトカイン(炎症反応を促進する働きを持つ低分子タンパク質の総称)を誘導、それにより肝臓でCRPが産生されます。これには12時間ほどかかるため、感染症ではCRPより先に白血球が増加します。感染症以外では、膠原病や、動脈硬化、肥満などでも上昇するとされます。このように血液検査でCRP値が高い値を示した場合は症状などに基づきさらなる検査を行う必要があります。症状がある場合はもちろん、なくとも要精査の場合は一度受診していただくことをお勧めします。
加えて・・・こんなオプションも!
抗CCP(cycclic citrullinated peptide)抗体検査
関節リウマチは関節の中の滑膜という部分に炎症が起こり、関節の痛み・腫れ・変形を起こします。関節リウマチを起こした滑膜にCCPという物質が抗原として存在しているので、抗CCP抗体は関節リウマチに特異性の高い抗体であり、関節リウマチの診断だけでなく発症を予測することもできるといわれています。
抗CCP抗体検査は以下の病院で実施しています。(※人間ドックのオプションとなります。)
土浦協同病院
JAとりで総合医療センター
※1HCV抗体検査は水戸協同病院では人間ドックのオプション検査となります。
※2RF検査は土浦協同病院、茨城西南医療センター病院では実施なし、JAとりで総合医療センターでは人間ドックのオプション検査となります。